ゴシックロリータ

ゴシックロリータは、1990年代以降に誕生した割合新しい女性向けファッションの一つであり、サブカルチャーでもあります。「ゴシック・アンド・ロリータ」(Gothic & Lolita)、「ゴシックロリィタ」「ゴシックロリヰタ」などの表記もあります。

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ゴシックロリータの根源

ゴシックとは?

ゴシックとは、そもそも12世紀から15世紀にかけての中世美術様式を指す言葉です。これは、華美を旨とするルネッサンス期に活躍した美術家などによって命名された蔑称でもあったのです。すなわち、先人たちを蔑むことで相対的に自分たちを高めて見せるためのルネッサンス期の傲慢の象徴でもあったのです。しかし、18世紀末期に入るとブラム・ストーカーの「ドラキュラ」やメアリ・シェリーの「フランケンシュタイン」などの怪奇・幻想小説が人気を博し、それらのゴシック小説に登場するゴシック建築の再評価の流れが生まれていくことになります。これを「ゴシック・リヴァイバル」と呼び現代に至るゴシック文化を定着させるきっかけとなったのです。

ゴスとは「ゴシック的思想を持つ人」のこと

ゴシック思想は、ルネッサンス文化の影響を受けた美術のメインストリームに対するカウンター・カルチャーとして産まれたものです。中世美術の持つ独特の陰影に潜むものを取り上げたゴシック小説が描いた幻想的なイメージが、ゴシック思想を形作っていったのです。日本ではゴスはゴシックの省略形として扱われていますが、本来は「ゴシック的な思想を持つ(人)」を意味しているのです。ゴスの代表格にはミュージシャンのマリリン・マンソンなどがいます。

ゴシック・ファッションの発生

ゴシックロリータの原点となるのが、ゴシック・ファッションです。ゴシック・ファッションはマリリン・マンソンなどのゴシック・ロックの音楽世界を再現したファッション文化として産声を上げたのです。退廃的・幻想的・怪奇的といったゴシック文化を表現するメイクやアクセサリーを身につけ、黒を基調とするカラーコーディネートといったゴシックロリータが持つ外見情報としての記号のほとんどはゴシック・ファッションから生まれたものなのです。

ゴシックロリータの誕生

ゴシックロリータという概念を定着させたのはビジュアル系アーティストに分類されるバンドMALICE MIZER(マリスミゼル)であると言われています。マリスミゼルが音楽的モチーフとした中世風世界観はゴシックそのもので、衣装などもゴシック要素を取り入れたものがほとんどでした。そのため、ライブにアーティストのコスプレしていく程の熱狂的なファン(俗に言うバンギャル)を中心にゴシック・ファッションが広まっていきました。そんな中、定着し始めていたロリータ・ファッションがゴシック・ファッションの持つ記号を換骨奪還し派生ジャンルとしてのゴシックロリータが産まれたのです。

ゴシックロリータの特徴

ロリータ・ファッションが「少女趣味」をカリカチュアライズしたものであると考えるならば、ゴシックロリータはゴシック文化の記号を持ち込んだものと定義することができます。しかし、ゴシックロリータはオリジナルであるゴシック・ファッションよりも少女的な部分を強く取り込んでいることが挙げられます。「ドラキュラ」よりも「不思議の国のアリス」、「フランケンシュタイン」よりも「マザーグース」と言ったファンタジーの中に潜むダークな要素を切り出しモチーフにすることがままあります。また、十字架や羽といった「堕天使」をモチーフにしたデザインやアクセサリーなども好んで使われています。

ゴシックロリータとメイド文化の相違点

いわゆる萌え文化の象徴として、ゴシックロリータはメイドと同格に扱われ、時には同一視されます。しかし、奉仕を旨とする労働者であるメイドと退廃的でダークな印象を表現するゴシックロリータは基本的に似て非なるものです。メイド服と俗に呼ばれるエプロンドレスは、ゴシックロリータのモチーフとして扱われる「不思議の国のアリス」のアリス・リデルが身に着けていたものと同じです。しかし、ゴシックロリータではエプロンは用いられないこと、ヘッドドレスと呼ばれる頭部装飾品はゴシックロリータでは場合によっては装着されない、テーマ性という点ではそもそも交わるところが無い、と言った違いが明確に存在しているのです。

コスプレ文化とゴシックロリータの間にある軋轢

ゴシックロリータを定着させたのがマリスミゼルのコスプレをしたバンギャルである、と先述しましたがその為か、ゴシックロリータの愛好者はコスプレのゴシックロリータを快く思っていないようです。それは、ゴシックロリータがサブカルチャーとしての側面を持っているからです。「コスプレとしてゴシックロリータを装うのは、ゴシックロリータの本質であるゴシック的精神を知ろうとしていない」と言われているほどです。現在まで存続している服飾文化には、必ず何らかのバックボーンを持っているのが現状です。たとえばセーラー服は水兵服としての機能美を追求した結果に産まれた服装です。そういった背景にまで気を使わなければ、本当のゴシックロリータを装うことはできないのです。

ゴシックロリータの変質

ゴシックロリータは、前述の通り「ゴシック・ファッションの記号を換骨奪還した服飾文化」ですが、その融通無碍ともいえる定義のためか様々な派生が生まれています。

和ゴス

和服をゴシックロリータにアレンジした派生ファッションの一つです。浴衣や着物のデザインや色調をゴシックロリータの要素に近づけたもので、帯をコルセットに見立てるという一種の見立て遊び的な楽しみ方を持っています。

グロロリ

ゴシックロリータの蔑称として生まれたものの、ゴシックロリータが持つ怪奇性や幻想性から離れ、生々しい傷跡や血糊といったグロテスクな印象の強いモチーフを取り込んでいます。これは映画「バトル・ロワイヤル」のヒットによって発生したバトロワコスと呼ばれるユーザーがゴシックロリータに移行したことで発生したファッションである考えられています。 ゴシックロリータを定義するのは精神性なのか、ファッションとしての記号なのか。そういった喧々諤々の論戦を繰り広げながら今日もゴシックロリータに身を纏った少女たちは町を闊歩するのです。

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